手術明日の朝からなのに、もう水もダメなの?

麻酔科が術前からかなり関わっている病院などではほとんど大丈夫なのですが、古い外科系の先生たちの昔の習慣が根強く残っている病院や、自家麻酔をされている整形外科などの単科病院では術前の絶飲食に関して古いままのことが多々あります。

さて、今回のテーマは、


  1. 冒頭だけどまとめ(これだけは覚えよう)
  2. この本がおすすめ
  3. ちょっと昔までは・・・
  4. そもそも何のために絶飲食時間が必要なの?
  5. 最近では・・・
  6. 他に気をつけることは・・?
  7. 今回出てきたキーワードでそのうち特集するもの

ということでやっていきたいと思います!

1. 冒頭だけどまとめ(これだけは覚えよう)

– 清澄水(水・スポーツドリンク・茶)は2時間前までOK!

– 母乳は4時間前まで!

– その他は全部6時間以上空けろ!(離乳食でも果肉入りジュースでもご飯でも何でもね)

2. この本がおすすめ

ここだけを扱っている本はないので、一般的な術前評価の本を紹介しますね。左の本は広島大学の讃岐先生の研修医用のハンドブックで、おそらく日本で一番研修医に売れている麻酔科の本ではないでしょうか。私も改訂があるたびに購入しています!しかもこのクォリティでやす〜い!!!

真ん中の本はかなりおすすめな術前評価の本で、担当する症例ごとに毎回読み込んで行くことでじわじわ染み込んでくると思います。

右の本は最近はやりの周術期管理チームのための教本。分厚いわりに文章も平易で比較的安いのでおすすめです!!

      

3. ちょっと昔までは

手術前日の21時(〜24時)からずっと絶飲食!!つらっ。゚(゚´Д`゚)゚。

いや、無理ですね。絶対隠れて飲んでしまいそうです

無駄に長い絶飲食時間はストレスにもなりますし、点滴していればまだ別ですが脱水にもなりやすいですし、いいことないです。特に乳幼児は。

特に昼過ぎからの手術でも画一的に前日から絶飲食のところもありましたから・・・(まぁ画一的にやればミスを防ぐという点ではいいかもしれませんが)

4. そもそも何のために絶飲食時間が必要なの?

全身麻酔をかけると下部食道括約筋が弛緩し、胃内容物の逆流が起こりやすい状態になります。その程度がひどいと気管から肺に内容物が流れ込み、誤嚥性肺炎を引き起こしてしまい、場合によっては致命的な状態になることがあるからです。

緊急手術を全身麻酔で行う場合には、ほとんどの場合十分な絶飲食時間を取れていないので、少し工夫が必要になります。手術室に勤務している看護師さんや、外科系の研修をしたことがある先生たちなら、ベッドを頭側が高くなるように傾けて(頭高位)、喉仏のあたりを抑えて麻酔導入を行なっているのを見たことがあると思います(詳しくはまた別稿で特集しようと思います)。

5. 現在では・・・

何も食べていなくても胃の中には胃液の基礎分泌量(0.6ml/kg/h位)と飲み込む唾液(1ml/kg/h 位)があるため胃の中は真の意味では空っぽにはなりません。なので、これ以上は絶飲食しても胃内容物は増えもしないし減りもしないよ〜というラインを超える絶飲食時間に意味はありません。

実際、水やお茶などの清澄水に関しては2時間後には95%程度が胃から腸に排出されていると言われています。これが固形物では時間がかかるので絶食の時間は絶飲の時間よりも必要ということになります。

そこで現在では

  • 水やお茶などの清澄水は2時間前まで
  • 母乳は4時間前まで
  • 離乳食や調製粉乳などは6時間前まで
  • 牛乳は6時間前まで
  • 軽食などの固形物は6時間前まで(脂分が多い食べ物は8時間以上など)

としているところが多いと思います。これをベースとして最近はやりのERASでは手術前夜や当日朝にOS-1などの経口補水液やアルジネートウォーターなどの炭水化物含有飲料などを飲ませたりしていますね。はっきり言って不味いですけどね!!

6. 他に気をつけることは・・・?

ただし、場合によっては上記の絶飲食時間を取れていても十分でない場合があります。胃内容排出時間が延長している状態というやつです。骨折などの外傷時には消化管活動が低下している場合が多いです。

具体的には、

  • 外傷(骨折など)
  • 疼痛が強い場合
  • オピオイドなどの薬物を使用している場合
  • 重症糖尿病患者や血液透析を受けている患者
  • 妊婦さん

などです。

また、緊急手術では基本的に胃内容が充満しているフルストマック(そのうち特集します)として対応することが多いです(直前に撮影されたCT画像などで胃内容物がほとんど確認できない場合は別ですが)。

7. 今回出てきたキーワードでそのうち特集するもの

  • フルストマックと迅速導入(crush induction)
  • ERAS(術後回復力強化)
  • 糖尿病
  • 血液透析

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